核の半減期とは?半減期の計算方法とその危険度の推定について

放射能の半減期
出所:原子力・エネルギー図面集

核爆弾の爆発が起きると、放射能を持つセシウムやプルトニウムなどの放射性同位体と呼ばれる核物質が大量に大気に放出されたり、土の中にいつまでも残ってしまったりすることがあります。

これらの放射性物質が出す放射線は私たちの体の細胞を壊したり遺伝子を傷つけたりするのでたいへん恐ろしいものであります。そのような危険な状況から生き残るためには正しい知識が必要です。その中で「核の半減期に関する計算」も重要なのです。これは核爆発が起きた時、またその後にかけてどのような行動を取ったら良いのかを考える時の指針となります。半減期の考え方も計算方法も一見すると難しく思えますが生き残るためと考えれば知っているほうが安心です。いたずらに恐れるよりも本当のところを知って対処できるようにしておきましょう!

核の半減期とは?

核爆弾の爆発などで現れてくる激しい放射能を出すセシウムやプルトニウムなどはもちろん恐ろしいですよね。しかし、それらの核物質も核爆発当初のエネルギーを永久に保って出力し続けて行くという訳ではありません。

そのような恐ろしい核物質たちも時間が経てば物質として変化して周囲への影響力は変わってくるのです。それは、ちょうど私たちの体が老化して運動能力や関節の可動域が変化してくるのとよく似ています。核物質にそのような変化が起こるのは核の半減期という法則があるからなのです。少し難しい感じがしますが、核の半減期について少し見てみましょう。その具体的な仕組みは次のとおりです。


セシウムやプルトニウム、ウランなどの核物質であってもその中には他の普通の元素と同じように原子核があります。核物質であっても元素である以上、構造的には一般的な元素と同じ仕組みでできているのです。例えば、それは人間とライオンは違うけれど口や胃腸、心臓や肺などの構造は似たような仕組みであるのと同じです。

そして原子核の形によってその核物質の元素としての姿や働き方が決まります。その形や働き方は原子の数によって決まります。原子核は時間とともに一回放射線を出すと一段階崩れます。これを放射性崩壊と呼びます

この崩壊にはいくつかの種類や系統が存在します。放射線を出すたびにだんだん原子の数が減って行きます。核物質の種類によって異なりますが、崩壊して行く速度や一度に減る原子の数は決まっており、放射性崩壊が起きる機会には法則性があるのです。そのため、計算することで原子数やその時の物質の種類などを割り出すことができるのです。そして崩壊しながら次々と違う元素に変化して行くのです。最終的には鉛になります。

その核物質が最終的に鉛などになるまでの間にはいくつもの元素を経て行くのですが、ちょうどその元素たちの真ん中まで来たときをその放射性物質の半減期と言います。

つまりその核物質の原子核が半分まで壊れて減るのにかかる時間のことを半減期と言うのですね。したがって、核物質の種類によってその半減期はそれぞれ異なることになります。言い換えればその核物質の持つ放射能が半分になるまでの時間が半減期であると考えても問題ありません。

また半減期が長い核物質ほど安定しています。対して半減期が短い核物質ほど不安定であるとされています。そして、半減期が短いものは医療用としての利用がしやすいとされています。レントゲン撮影やがんの放射線治療などに使われています。場合によっては工場などで注射針などの使い捨て式医療器具を生産する際に滅菌のために使われている場合もありますね。

ちなみに半減期をグラフで表現すると原子核の中の原子数は時間経過と反比例します。つまり、崩壊の最初の間は素早く減って行き、崩壊の終わりに近づくほど崩壊の速度が遅くなると考えられます。たとえるならケーキを食べるときに初めは夢中でパクパク食べてしまいますがだんだんおしゃべりが多くなり食べる速度はゆっくりになり、終わりのころにはさらに少しずつゆっくり食べていたりするのに似ていませんか? 

半減期の役立て方

半減期の考え方を使えば計算により放射性同位体などの核物質の時間経過による質量の変化を求めることができます。

また、半減期と崩壊定数から放射性物質の種類を推定することができます。さらに土や岩に閉じ込められた化石や火成岩などは放射能の減っている度合いと半減期の知識を使って計算すれば年代測定ができます。これを応用して考古学の世界では土器や骨などの年代を調べています。これを放射性炭素年代測定法といいます。

核の半減期の計算方法

放射性同位体は時間とともに崩壊して行くわけですが、その変化は原子数の変化で判ります。それを知るためには放射性同位体それぞれの崩壊定数と原子数を使って微分方程式で計算するのが基本です。けれどもそれは、少し難しいですよね。そこでもう少し簡単な計算方法もありますのでそちらで計算してみましょう。

その計算に用いる公式は次のとおりです。

【 時間がtの時に残存している原子核の数 】は【 原子核の初めの数 掛ける 二分の一 】の【 時間 割る 半減期 】乗という公式があります。

ラジウム鉱泉などで有名なラジウムについて半減期の公式を使った計算をしてみましょう。 

ラジウムは半減期が1600年です。100gのラジウムが半分の50グラムになるのは何年後でしょうか?

それではさっそく先ほどの半減期の計算公式に数字を入れて計算してみましょう!

50=100×(1/2)のt/1600乗なので、

50/100=(1/2)のt/1600乗

1/2=(1/2)のt/1600乗

t=1600となります。

答えは1600年後となります。なるほど半分の重さになるには半減期の年数だけかかるというわけですね。この計算公式は正しいようです。

物理的半減期と生物学的半減期

今回ここでご説明させていただいた半減期は物理的半減期です。純粋な核物質の変化について述べたものです。

しかしながら、人体が放射能に被ばくした場合には半減期の考え方が複雑になります。人体に放射性同位体などの核物質が取り込まれた場合、体内の代謝によって時間とともに核物質が減って行きます。体内の核物質が半分にまで減った時を生物学的半減期といいます。

体内の場合は物理的半減期と生物学的半減期を合わせて計算して実効半減期として考えます。

核の半減期と危険度の関係

まずは主な核物質の半減期を見てみましょう。次のとおりです。

(小数点2桁以下切り捨て)

     核物質の名称    半減期までにかかる時間
     塩素38       37.0分
     ヨウ素134       53.0分 
     ヨウ素132       2.2時間
     テクネチウム99m       6.0時間
     ヨウ素133      20.8時間
     ランタン140      40.3時間
     モリブデン99      66.0時間
     テルル132      77.0時間
     ラドン222      92.0時間
     ヨウ素131       8.0日
     バリウム140      12.7日
     ヒ素      17.7日
     イットリウム91      58.5日
     コバルト58      70.8日
     セシウム136      13.0日
     セリウム144     285.0日
     セシウム134       2.0年
     コバルト60       5.2年
     トリチウム      12.3年
     プルトニウム241      14.3年
     ストロンチウム90      28.9年
     セシウム137      30.1年
     プルトニウム238      87.8年
     ラジウム226      1600年
     プルトニウム240      6561年
     プルトニウム239     24000年
     ウラン235        7億年
     カリウム40       13億年
     ウラン238       45億年

セシウムやストロンチウムなどはニュースやテレビ番組などで良く聞かれた物質名です。その種類によっては半減期が30年位のものもありますね。これらは半減期が長いので危険と思われがちですが、実は放射性同位体の半減期の長さと人体や環境への危険度は一緒ではありません。半減期が長いものは長い目で見ると放射線を出し続けるものなのですが、半減期が長いからこそ放射線が出る回数は意外にも少ないようなのです。

つまり、核爆弾の場合は一度に放射線が大量に出されるように計算して作られているために熱線もひどいですし被害も出ますが、それを乗り切れば残留した核物質からの放射線はゆっくりとしか放射されないので放射線量は核爆発直後と比べると急激に少なくなるものであると考えることができるのです。これは放射性同位体は崩壊するものであるけれど、半減期の長い放射性物質ほど放射線を出しにくいという性質によります。

このことについては「7の法則」という考え方があります。

7の法則

これは「爆発した後、7倍の時間が経過すると、放射線の量が10分の1に減る。」というものです。放射能の量は核爆発の7時間後には10分の1に、7×7時間後(49時間後・約二日後)には100分の1に、7×7×7時間後(343 時間後・約2週間後)には1000分の1に減ると計算して推定することができます。

このことは核爆発直後から最低49時間をしのぐことができればなんとか生存できるかもしれないということを意味しています。

半減期が長い放射性同位体は安定しているので常に少しずつ放射線を出しています。したがって半減期が短く不安定なものよりは危険性が少ないのですが、だからと言って近づいたり手で触れて良いようなものではもちろんありません。被爆後も飛び散った核物質には触れない方が安全です。

核の半減期まとめ

結論としては半減期の知識を基に考えれば、核爆発とその直後の放射能の多い時間さえ上手に計算して避けることができれば助かるかもしれないのです。もしも核爆弾などの攻撃を受けても、安全な場所で隠れていることができれば、時間が経てば経つほど安全になって行くということなのですね。そんな時にもしも核シェルターがあればとても心強いですね。

以前、広島や長崎ではひどい被ばくを受けました。そのことはとても悲しいことです。けれども現在では元気に人々が住んでいます。その事実に希望がありますね!