核ミサイルが発射された場合、迎撃することはできるのか?日本の安全性を検証!
戦争は絶対に繰り返してはならないこと、その認識は常識的な人であれば皆に共通していることでしょう。しかし、そのための手段においてはいろいろな考え方があり、主張がぶつかり合って今も議論が続いています。人類が目指すべき平和というのは、まだまだ明確な形となってはいません。
そこで大切なのが、万が一の備えです。今の平和が永遠に続く保証などどこにもありません。理想を追うのも良いですが、まずは「備えあれば患いなし」でしょう。
隣国の脅威に日本は一体どのように備えているのか、解説していきます。
Contents
日本の迎撃システム
技術の発達したこの時代に、いきなり肉弾戦の戦争が起きるとは考えにくいです。最も懸念すべきはミサイルでしょう。その中でもやはり核ミサイルの投下だけは絶対に避けなければなりません。
世界で唯一の被爆国であるこの日本に、3度目の核が落ちることなど許されてはならないことです。
日本にできること
いくら日本側が核ミサイルを落とすまいと固い意志を持っていたとしても、発射ボタンを押すか押さないかは核ミサイル保有国の判断になってしまいます。世界情勢が安定しているうちは良いですが、何かのきっかけでたとえば北朝鮮の政権が崩壊し、トップが暴走したとしたら、可能性はゼロではないのです。
さらにいえば、日本は現憲法において敵基地攻撃能力を有しません。万が一、核ミサイル発射の気配を察知できたとしても、先行して核ミサイル基地を攻撃するというのは事実上不可能となります。今の日本ができることというのは、相手に核ミサイルの発射ボタンを押させないようにすることと、発射された後の迎撃技術を磨いておくことしかないわけです。
具体的な迎撃シミュレーション
それでは具体的な核ミサイル迎撃のシステムを解説していきます。
北朝鮮から核ミサイルが発射された場合、約10分ほどで着弾すると予想されています。まず、発射が確認された直後、30秒ほどでアメリカ軍の警戒衛生がその動きをキャッチします。主要な基地に送られる情報は発射地点と時刻、そこから計算された着弾予測地点と時刻です。
同時にミサイルの種類も判別され、これらの情報がアメリカ軍基地から日本に入るまでに1分程度はかかると想定されています。
ここからいくつか日本側の手続きが必要になります。まず、防衛の指揮を判断する航空総司令部へ情報が飛び、それを受けた防衛大臣が総理から自衛隊による破壊措置命令の承認を受けます。破壊措置命令が常時発令状態になるまでに、少なくとも2分はかかるでしょう。
その間に核ミサイルは弾頭が切り離される第2段階へ入ります。発射から3分後に、海上自衛隊が核ミサイル迎撃準備をイージス艦で始めるでしょう。同時に各媒体を介してJアラートが発動、国民に避難が呼びかけられます。
発射から約4分後、核ミサイルの軌道が比較的緩やかになる頂点付近に達する頃合いに合わせ、イージス艦から最初の迎撃ミサイルが発射されます。アメリカのイージス艦とも連携し、警戒衛生の誘導によって最大高度500kmまでの間で撃ち落とそうとします。
もしもここで撃ち漏らした場合、着弾までは残り3分となります。核ミサイルが下降をはじめたら、最終手段として航空自衛隊が持っているPAC-3が核ミサイルの迎撃態勢に入ります。ただし、PAC-3の最大射高は15kmほどで、旅客機が飛ぶ高度よりも数キロ高い程度です。よって、この段階にまで来たら肉眼で迎撃の様子が見えるくらいになります。
このように軍事的な迎撃システムは二段階の策によって撃ち落とせるように組まれているのです。
核ミサイルを迎撃することは可能なのか?
さて、迎撃までの仕組みを理解したところで、実際に撃ち落とすことは可能なのか、具体的な性能について見ていきましょう。
第一の迎撃THAADの性能
THAADは発射された核ミサイルの第二段階である宇宙空間で撃ち落とすシステムです。アメリカの国防総省ミサイル防衛局によれば、迎撃実験の結果は2017年の時点で15回中15回が命中と、100%の成功率を発表しています。
ただし、実験というのはある程度の整えられた環境であったり、天候であったりと、有利な条件で行われているものです。実戦で発射される場合、相手も日本に都合の悪い条件を選ぶことでしょう。よって、決してパーフェクトとは言えません。
事実、実戦に近い状況でのイージス艦からの発射実験では100%ではなく、42回中35回の成功率という報告もあります。現在、この成功率をより高めるために、イージス艦の防衛システムをそのまま陸上に移したイージス・アショアの導入も検討されています。
最後の砦PAC-3の性能
PAC-3は既に下降を始めた核ミサイルに向けて発射されるもので、スピードも速くなっている分、撃ち落とすにはかなり困難な状況を強いられます。よく「ピストルの弾をピストルで撃ち落とすようなもの」と表現されるほどで、落ちてくる核弾頭の速度はマッハ10にも達しているのです。
困難ではあるもののPAC-3は地対空誘導弾の中では一番優秀な迎撃システムとされています。飛来するものを感知できるコンピュータが搭載されていて、スピードが要求される実戦において、あらゆる計算を自動で瞬時に行ってくれるのは心強いものです。
2009年から2013年まで行われた14回の実験では、100%の命中率ということで報告が挙がっています。
一方、数々の憶測や噂の中には当たる可能性の方が低いという声もあります。その主な根拠となっているのが湾岸戦争で使われた対航空機用ミサイルです。
このパトリオットの命中率は9%ほどと、ほとんど役に立っていません。しかし、これはPAC-3の先代となるPAC-2のデータです。改良が重ねられているので性能は間違いなく上がっているでしょう。また今も迎撃距離を延ばす改良が重ねられていて、最後の砦としての性能を高めようとしています。
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迎撃できる可能性は確かにあります。しかし、もし成功したとしても相手は核ミサイルです。放射能は降り注ぎますし、まったく無害に終わるという可能性は低いでしょう。
できれば宇宙空間で撃ち落とせたら良いのですが、その確率が100%でないうちは、国民にも万が一のときの備えが必要というわけです。